akechi’s diary

今日も大丈夫です

【191108】読んだ:大沢武志『心理学的経営』

リクルートの組織文化って結構(おおよそいい意味で)異常だと思っているんだけど、そんなR社の初期段階にて、組織や人事制度設計に携わったひとによる組織論の本があることを知ったので早速読んだ。

f:id:akechi_countif:20191118202943j:plain

 

自分の偏見を正直に書くと、ビジネス実務と心理学という組み合わせにはいい印象がない。すごく浅瀬で援用が行われているというか、それ心理学じゃなくてただのメンタリズムだよね?みたいな内容が語られがちというか…。新卒の採用面接やってると、心理学やってましたって学生にはフェイク野郎が多い気がするというか…これはマジの偏見だけど…。

でも、これはいい本だったんだな。たしかに名著。たぶん心理学という学問の一側面なのだと思うけど、人の心という極めて定性的なものを取り扱うにあたって、目的をしっかり設定すると必然的に統計的手法による調査に行き着くのだなー。

そんな統計的調査や過去の論文をふんだんに引用した本書。組織活性化についての章、リーダーシップおよび管理能力についての章が特に良かったので、とりあえず学びのうち一部を書き連ねておく。


・組織活性化(=仕事に関するモチベーション)を左右する要素
 ■外的報酬(給与やインセンティブ
  ― 報酬そのものに魅力があるかどうか
  ― 仕事における努力が報酬につながるという(主観的な)見込みがあるかどうか

 ■内的報酬(仕事そのもののやりがい)
  ― スキルの多様性:その職務を遂行するために様々な技能が求められるか
  ― タスクアイデンティティ:仕事のはじめから終わりまで携われるか
  ― 仕事の有意義性:自分の仕事がどこに役立っているかを実感できるか
  ― 自律性:自分の仕事を自身の裁量によって進められるか
  ― フィードバック:自分の仕事の成果が目で見て確認できる状態であるか

 

つまりこれが満たされている状態、あるいは外的報酬と内的報酬の掛け算の結果が高い状態を「やりがいがある」として定義している、と。そうだよなーという感じ。対義語としては分業や単純作業、インセンのない標準化された業務かな。

 

・人事異動や組織改編は適宜行い、カオスを創る。さもなくば組織の硬直化=いわゆる大企業病を招くため。大企業病の一側面に「組織の硬直化」という定義で光を当てたのが地味に目からウロコ。

 

・リーダーシップとは
 「集団維持機能」と「目標達成機能」を総合したもの。集団維持機能とは、個々のメンバーへの共感や配慮によってチームの雰囲気を保つことを指す。目標達成機能は字義の通り。適切な指示、役割の明確化、業務指導、決断。→すごく腑に落ちる定義付け。リーダー論とかマネジメント論はさすがに何冊か読んでるけど、このくらいすっきり定義付けしてくれているのはあんまりないんじゃないかな。。


 

まあ読んでると、いま勤務している企業について、よくできてるなーというところと、
ここは改善の余地があるなというところが見えてくる。10月に昇進して、あらためて組織の仕組みについて提言できる立場になった(というか、それを再確認した)はいいものの、「ここまでやっていいよ」という裁量をフルに使えていないのだよね。これはシンプルに実力不足。社内での提言力を自分で過小評価しちゃってるのかもしれない。びびってるのかも。

ポジション上、組織拡大、生産性向上、営業戦略/目標計画策定についてはある種の責任を負う立場として、拙いなりにだましだまし見様見真似でやってきたけど(保険をかけすぎ)、社員のやりがいとかモチベーションをそれと絡めたことって実はほとんどなく。それはおそらくポリシーとして、システマチックに、安定して、誰が抜けても、もっと言えば社員の能力が高くなくても稼働する組織を是としているからなんだろうね。ただその業務デザインと社員のやりがいや幸福度は少なくとも逆向きのベクトルではないというか、むしろ事業拡大と社員の幸福度/モチベーションの最大化において必ず出てくる不和の部分を、組織を硬直させずにどうアジャストするかって、自分ごとにする価値があるというか、完全にworth-committingじゃんね。がんばろうね。

 

心理学的経営 個をあるがままに生かす

心理学的経営 個をあるがままに生かす