【200220】読んだ:二階堂奥歯『八本脚の蝶』
2週間放置ってブログでもなんでもないな。
久々に本の感想を。
なにやら圧のある本が文庫化するとtwitterで流れてきたので、Amazonで予約してまで買ってしまった。河出文庫だし。※オタクとして、河出書房および河出文庫をつよく信頼している
二階堂奥歯『八本脚の蝶』は25歳の若さで自死を選んだ女性編集者が、人生最後の3年間に書き綴ったブログ記事を書籍化したもの。このブログは管理者を変えて保存されており、「八本脚の蝶」で検索するとたやすく閲覧することができる。
ブログであるから記事は逆時系列順に並んでおり、訪問者はまずそこで彼女が人生最後に――ビルの屋上から身を投げる、ほんの数時間前に――POSTした一連の文章を突きつけられることとなる。
引用元:八本脚の蝶
さて、本書およびブログである『八本脚の蝶』を特異ならしめているのは、著者の常軌を逸した読書体験に基づく、圧倒的な引用・参照量であろう。記事によると、著者は一年にだいたい360冊程度の読書をするのだという。社会人としての生活を営んでいるからこそのこの冊数で、学生時代以前はさらに多かったとも。(平均以上に本を読む方だとは自負しているが、それでも3~5倍程度の差がある…)
重ねて言えば、その読書の多くが幻想文学やSF、美学、哲学など、どちらかというとハードなジャンルのものだ。ブログのトピックも、それを反映してエロ・グロ・耽美的なものや、思弁的なものが非常に多い。こういった参照によって編まれた価値観や、それがどう生きづらさを生じさせ――自死をもたらしたのか、あるいはそれらは全く関係がなかったのだとしても、我々はその深淵をうかがい知ることはできない。
ただ、それが悲劇的な結末だったとしても、かつてこれだけ深く物語を愛し、殉じた方がいるというのは、いち読書人としてどこか救いのようなものを感じてしまう。こういう方を死後、商業的に消費するのはある種の冒涜なのではないかという葛藤もありつつ、どこか励まされるような気持ちになったのでした。