akechi’s diary

今日も大丈夫です

【191006】読んだ:ティムール・ヴェルメシュ『帰ってきたヒトラー』

そういえば「ヒトラー 最期の12日間」観てないな。

 

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【あらすじ】
ヒトラーが現代に蘇った!
1945年4月、総統地下壕で自決をしたはずのヒトラーは21世紀のベルリンで目を覚ます。"インターネッツ”を駆使して現代の知識を収集しつつも、周囲とのすれ違いからあろうことか「本人のモノマネ芸人」として大ブレイク。ついには現代社会を鋭く批評する論客として、大衆の熱狂的な支持を獲得してしまう彼。ドイツ社会はどこに向かうのか。

帰ってきたヒトラー 上 (河出文庫 ウ 7-1)

帰ってきたヒトラー 上 (河出文庫 ウ 7-1)

 

 


めちゃめちゃ「現代」だな…という感想。
素性はさておいて、キレの良いパフォーマンスをできる人間が浮動票をかっさらっていくというムーブメントはYouTubeTwitterが普及しきった今、そして今後、より加速していくのだろうな。直近だとNHKから国民を守る党の立花孝志氏みたいな。行動戦略の選択とプロパガンダが巧みな人間がどんどん認知を得やすくなっているというか。

 

むしろそういう風潮って大マスメディア時代のほうが強くて、インターネットはメディアが報道しない裏側を暴ける装置として機能しているのではないのか?というとどうやら最近はそんなこともなくて、どちらかというと正攻法ではマスメディアで露出の機会を得られないような人間が世の中に認知される手段という側面がどんどん強くなっている気もする。ネガティブ情報の拡散も早いという怖さもあるけど、ポジティブ情報がその一面だけを切り取られた状態として拡散していくのも別の恐ろしさがあるよなと。

 

この本だと普通にヒトラーが優秀かつ人格的に優れた人間――ただし政治的思想だけ異様に尖っている――として描写されていて、読者が「まああれだけのことをできる人間、優秀に決まっているよな…」「ヒトラーも一人の人間なんだよな…」という背徳的な気付きを得てしまう作りになっているのも風刺として良くって、人格と能力、そしてモラルを切り離してその人物を評価できるほど、人間の脳みそって合理的にできていないんだよね。